クリーンコア戦略を実現するdbSheet×ERP連携

2026.07.08 4:17 PM - By 西脇和宏

クリーンコアとは何か ― ERPを「守る」ための新常識

SAP S/4HANAをはじめとするクラウドERPの普及とともに、「クリーンコア(Clean Core)」という考え方が注目を集めている。クリーンコアとは、ERPのコア部分をできる限りカスタマイズせず、標準機能(Fit to Standard)を最大限活用したうえで、どうしても必要な拡張はERPの外側(Side-by-Side)で実装するという運用方針である。
アドオンを積み上げたERPは、バージョンアップのたびに大規模な検証・改修が必要になり、俊敏性を失っていく。クリーンコアはこの技術的負債を未然に防ぎ、ERPを継続的にアップグレードできる「持続可能なシステム運用」を実現するための考え方だ。

生産計画管理はなぜ「アドオンの温床」になりやすいのか

会計・販売実績・購買といった仕様が安定した領域は、ERPの標準機能との親和性が高い。一方で生産計画管理は、需要変動、内示・確定オーダーの変更、工程進捗、多品種小ロットへの対応など、変動要素が非常に多い業務領域である。
こうした「仕様が固まらない」業務ほど、現場は使い慣れたExcelで独自の計画表やシミュレーションシートを運用しがちであり、これをそのままシステム化しようとすると、ERP側に個別ロジックのアドオンが積み上がっていく。クリーンコアを掲げていても、生産計画の現場対応力を軽視すると、結局はコアが汚れてしまうというジレンマがある。

dbSheetという選択肢 ― Excelのままシステムをつくる
dbSheet(株式会社ニューコム)は、「脱Excel」ではなく「Excel業務の変革(Excel Transformation)」を掲げる開発基盤である。現場が使い慣れたExcelシートの操作性・関数・マクロをそのまま入力画面や帳票として使いながら、背後ではデータベースによる一元管理、権限分離・操作ログなどのIT統制、他システムとの連携を実現する。
この特性は、クリーンコア戦略が求める「ERPの外側で拡張を行う」という発想と相性がよい。生産計画のような変動が激しい業務領域をERPコアに取り込むのではなく、dbSheetを受け皿としてERPの外に切り出すことで、ERP標準機能を保ったまま現場の俊敏性を確保できる。
・ノーコード/ローコード開発によりVBA知識がなくても内製化を推進できる
・権限分離・改ざん防止・操作ログなどIT統制機能を標準装備
・SQL Server、Oracle、MySQL、PostgreSQL、SAPなど幅広いデータソースと連携実績あり

dbSheet⇔ERP連携による生産計画管理シナリオ
実際の業務フローに落とし込むと、ERPとdbSheetの役割分担は次のようなイメージになる。
1.ERP(基幹システム)は受注情報・部品表(BOM)・在庫実績などの「確定情報」を管理するマスタを標準機能のまま運用する。
2.dbSheetは、ERPとDB/API連携し、オーダー情報や部品構成、在庫データを取得。現場担当者は使い慣れたExcel画面上で、需要変動を踏まえた生産計画の立案や、内示変更時のシミュレーションを行う。
3.現場で確定した計画・工程進捗はdbSheet側でデータベース化され、変更履歴・承認履歴とともに管理される。
4.確定した計画データはdbSheetからERPへ書き戻され、実績管理・原価計算・購買計画などERP側の標準プロセスに反映される。
※ ERP標準領域とdbSheet拡張領域を分離することで、生産計画側の仕様変更がERPコアの改修に波及しない構成となる。

領域ERP(標準機能)dbSheet(拡張領域)
役割確定情報の一元管理(受注・BOM・実績・原価) 変動業務の立案・シミュレーション(生産計画・進捗)
特性仕様が安定・標準機能で完結 仕様変更が多く現場主導が有効
改修時の影響コアを変更しないためバージョンアップが容易 Excelベースで柔軟に改修・拡張が可能

この連携がもたらすメリット
・ERPのクリーンコア維持によるバージョンアップ・保守コストの低減
・現場の使い慣れたExcel運用を変えずにDXとIT統制を両立
・権限分離・操作ログ・改ざん防止によるガバナンス強化
・ノーコード開発による内製化と、需要変動への俊敏な対応
実際、dbSheetは製造業のPSI管理(生産・在庫・販売の最適化)や生産情報管理の領域で豊富な導入実績を持つ。ERPと現場のExcel業務を切り分けて連携させるという発想は、特別な仕組みではなく、すでに複数の製造業で運用されている現実解である。

まとめ
クリーンコア戦略は、単に「ERPを触らない」という制約ではなく、「ERPが本来担うべき領域」と「現場の俊敏性が求められる領域」を切り分け、それぞれに適した仕組みを当てはめる発想である。
生産計画管理のように変動の多い業務は、ERPコアに抱え込むのではなく、dbSheetのようにExcel資産とIT統制を両立できる基盤で受け止める。ERPとdbSheetを適切に連携させることで、ERPは標準を保ちながら軽やかにアップグレードでき、現場は使い慣れたExcelで変化に対応し続けられる。これが、dbSheet×ERP連携によるクリーンコア戦略の実像である。
西脇和宏

西脇和宏